![]() 大山全代(Ohyama, Masayo)ディレクター
日本語を教え始めて10数年が経ちますが、現在は日本国外で生まれ育つ日系人子弟や国際結婚の国際児を対象とした継承語としての日本語を教える傍ら「読み書きの能力と習得方法」を研究中です。「継承語」は言語習得理論の確立も含め新しい分野ですが、教育実践事例を米国のACTFLを始めとして日本のMHBにおいても発表をしております。継承語学習者の二言語の読み書きを高いレベルに育てることを応援する場として2005年に長野なみあいキャンプを始めました。 キャンプが目指すもの緑の山々に囲まれた、なみあいキャンプの一ヶ月の合宿生活は、自分の身の回り、共同で使うところを気持ちよく生活することから始まります。生活面の自立が学習成果にも反映されると言われますが、自律は最も基礎となる重要なものだと思います。毎日の掃除の後の気持ちよさを体験し習慣化していきます。教室の中での学習やたくさんの情報を詰め込んでもそれが定着し使えるようにすることはなかなか難しいのですが、体験は習得していくことをより可能にしてくれます。キャンプでは、毎年テーマを決め地域につながるプロジェクト活動をして、調べたことを浪合小中学校で全員協力して発表します。本物体験は子どもの好奇心や感性を育てますが、学力も伸ばします。
自分自身が世界の出来事とどのようにつながり、自分には何ができるかを考えられる自律した子供たちが育つよう支援していきたいと思います。グローバルな問題と地域のつながりに目を向け、問題意識を持ちながら、話し合い、助け合い、協力し合う一人一人の小さな行動が世界を変化させることができることを意識し、一歩踏み出す行動ができる人を育てていきたいと思います。そして、キャンプは知的探求の共同体作くりを目指します。 舛谷 麻美(Fleming Masuya, Mami)プログラムコーディネーター
「まきこみ」が作り出すコミュニティなみあいキャンプは4週間にわたって行われる長期キャンプです。この長期キャンプを成功させる一つの鍵は、私たちが作る小さなコミュニティを外の大きなコミュニティとつなげ、いかに「開かれたコミュニティ」を作り出すかということです。この「開かれたコミュニティ」が「人とのつながり」を作り出し、キャンプがより意味のあるものになります。私たちはお客さんとしてなみあいに滞在するのではなく、コミュニティの一員としてキャンプを行います。では、どうやってそのようなコミュニティを作り出すのでしょうか。それは、家族、山村留学生の仲間、地元の子ども達や村の人たちを私たちのキャンプにまきこむことによって可能になります。 子ども達が毎日交代で発信しているブログは、家族や親戚、また一般の閲覧者にとって毎日のことが手にとるようにわかります。また、数ヶ国語での発信は、日本語を話さない片親も積極的に参加することができるのです。キャンプ中は離れて暮らしている家族にとって、ブログを読むことが生活の一部となり、毎年行われるフォトコンテストでは、遠くにいながらも投票に参加がすることができます。子ども達にとって「身近な人が読んでくれている」、「自分達の日記を待っている」、「フィードバックがもらえる」ということがブログを発信する意欲を大いにかきたてます。加えて、ブログのコメント欄に書かれる家族や友達からの励ましは日本語を学ぶやる気を十二分に高めてくれるのです。さらに、「親子で楽しめるキャンプ」をモットーとして開催するオープンハウスは、家族の方にも魅力的なプログラムを用意しています。ブログでの参加に加え、実際にキャンプ地にやってきて子ども達とキャンプを体験することもできるのです。 山村留学の仲間とは毎週一回食事を作って食べた後、遊んだり、週二回はスポーツで汗を流したりします。体験入学の時は一緒に登下校したり、テントハイクや川遊びにも出かけます。また、最後に行われる催し物の一つであるキャンプファイヤーは儀式から始 り、歌などの出し物をお互いに披露したり、ゲームをしたりします。キャンプ中は山村留学の仲間との交流が豊富にあり、子ども達はそれぞれ友情を深めることができます。 地域の子ども達とは、現地小中学校への体験入学や毎週行われるスポーツ大会で交流します。また、キャンプ終盤に開催する食事会では、山村留学の仲間や地元の人々を招待し、キャンパー全員で準備した食事を振舞います。たくさんの時間をかけて完成させたプロジェクトは、学校と食事会で発表します。キャンパーの視点から見た日本やなみあいは、地元の子ども達にとって刺激となっているのは言うまでもありません。 ![]() ![]() 中野 友子(Nakano,Tomoko) プログラムコーディネーター
生活体験型のとても素晴らしいキャンプです浪合は長野の山村で日本の自然を大切に残している、日本でも希少な場所です。しかし、浪合の素晴らしさは自然のみならず、そこに住む人々の素晴らしさにもあります。それは、 浪合村が日本の各地に住む子ども達の山村留学を受け入れ自然の中で子ども達をのびのびと育む素晴らしい環境をつくっていることにも現れていると思います。 浪合キャンプは、この素晴らしい浪合の村に世界の様々なところから集まって4週間共同生活をしながら学び合うという、生活体験型のとても素晴らしいキャンプです。 大山先生が始められたこのキャンプは地域の人とふれあいながら、日本的な伝統的な文化を体験したり、自然との共存を体感したり、まさに浪合でなければ出来ない沢山のプログラムが毎日組まれています。 しかし大切なのは、ここでの子ども達の学びは受け身の学習ではないというところに意味があります。毎年地域に関連したテーマが与えられ、自ら積極的に問題を発見しそれに取り組み、それを自分の言葉として外に発信できるようにするというまさに自律した学習者、生涯学習者を育てる貴重の学びの場でもあります。 4週間が終わったときの子ども達の顔が自信に満ち、大きく成長したと感じられるそんなキャンプです。 ![]() ![]() 津田和男(Tsuda, Kazuo)キャンプ企画アドバイザー
夏休みをどう受け止めるかアメリカにおける夏休みは多くの国で夏休みを削って授業時間を増やそうとする傾向がある中で、きわめて消耗的な時間帯と言われています。確かに学習時間の確保と言う観点からは、アメリカの夏休みがこのやり方でよいのかどうか大きな課題であると言えましょう。しかし、アメリカの夏休みをよく考えてみると、教育の本来の目標が単なる計算力や読解力の向上による学習力の強化ではなくて、問題解決能力の付与向上にあるとすれば、夏休みをこの期間に当てるのが最もふさわしいのではないかと言う視点が登場してきます。アメリカの長い夏休みとサマーキャンプは切っても切れない関係にあると思いますが、サマーキャンプを通じて自然のなかで、問題に直面し、解決方向を自らの力で見出していくという体験学習こそが、問題解決能力の付与向上と言うことに最もふさわしい体験化だということを誰しもが認識しているからではないでしょうか。 サマーキャンプに4週間は必要か結論を先に言うと、4週間はどうしても必要です。サマーキャンプの意義をカウンセリングにおける4サイクル循環の定義に当てはめると、 1.導入期:新しい環境に慣れるための高揚期 2.不満期:好奇心に満ちた時期からいやな面が目についてくる時期 3.諦観期:不便な面にも慣れてその現状が受け入れられる時期 4.適応期:さらに前向きにその場が好きになり、その時間を有意義に過ごそうと 地に足が着いた生活を始める時期 となります。 この4サイクル循環を達成するには本来であれば4年の歳月を要しますが、夏休みに集中して最短時間で体験しようとする場合でも、4週間は必要とされています。そしてこの4サイクル4週間を通じてキャンパー達が問題解決能力を勝ち取ることが出来れば、長い消耗的な時間帯も教育的に意義あるものに転化することが出来るのではないでしょうか。 ![]() ![]()
NPO法人なみあい育遊会長野なみあいキャンプは「浪合通年合宿センター(村立山村留学)」及び「なみあい遊楽館」を運営管理するNPO法人「なみあい育遊会」の協力を得て、キャンプ活動をより一層充実させています。なみあい育遊会のスタッフは野外活動指導有資格者でテントハイクを初めとする野外活動、農園作業、川遊び、木工工作などの指導に当たってくれます。また、浪合通年合宿センターで生活する山村留学生とはキャンプ期間中にスポーツ、野外活動、懇親会を共にして友好を深めています。
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